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芽以は安藤を見上げたあとで、
「ありがとうございます」
と頭を下げた。
うん? と微笑んだまま、安藤がこちらを見下ろす。
「私、逸人さんが社長の器だと褒めてもらうより、今の一言の方が何倍も嬉しいです」
そう笑顔で言うと、安藤は、
「……芽以さん。
逸人さんは、いい奥さんをもらわれましたね」
と言ってくる。
そういえば、この人、見たことがあると思っていたら、子どもの頃、圭太と逸人と庭で遊んでいたら、よくお菓子をくれていたおじさんだ、と気がついた。
「でもま、悪妻のほうが伸びる時もあります。
そこに期待しましょうかね」
と安藤は、ニンマリ笑う。
……悪妻って、日向子さんのことだろうか。
いや、そんなこともないような、とは思ったが。
すぐに日向子のことだと思い当たってしまった時点で、自分も安藤と同罪だろう。
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