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だって、これは。
確かに『鉄砲』って付いてるけど、名前だけだ。こんな心もとない、武器とすら呼べないようなもので戦えるわけがない。そんな事は、小学生でも分かる。
いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。
僕は、転ぶような足取りで、夢中で坂を駆け下った。
崖から落っこちないように、ひた走る。時々石や草に足を取られそうになったが、体はぽかぽか温かくてパワーが漲っていた。なんだか、ばあちゃんと一緒にいる間に充電したみたいだ。そう思うと、ぐっと希望が込み上げた。
だけど……この坂、どこかおかしい。
走り始めてしばらくしてから気付いた。麓からばあちゃんちまで、さして長くない坂だ。なのに、どこまで走っても麓に着かない。月も無く、光が無い。暗い山道とは、これほどまでに怖いものなのか。――――違う。夜闇が怖いんじゃない。後ろから迫りくる『あいつ』が、とてつもなく恐ろしい。黒々とした気配が押し寄せるのが、怖い。
来た!
もう真後ろまで来ている。たぶん、首筋に息がかかるような距離。
ぶわっとのしかかるような気配がして、肩を掴まれた。
冷たい!
鋭い爪がぐっと食い込み、そこからぞっとするような冷気が入り込んできた。力を吸い取られるような感覚に襲われた。
僕はあまりの怖さに、無我夢中で手を振り回した。
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