第二章 『仮初めの日常』

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この寮にはエレベーターも完備されており、学園の建設費のほとんどがこの寮に費やしているんではないかと思うほどだ。 ー最も、寮としての機能が無くなったため部屋は開け放たれ閑散とした印象を受けるが。 閑話休題。 エレベーターに乗り込み、パネルを操作する。 旧時代にあったようなボタン式の昇降装置ではなく、各部屋のルームキー反応して自動的に動かせるようになっている。 だが寮住まいではないために、わざわざパネルを呼び出し階数を入力しなければならない。 多少手間だとは思うが、何度か通っていくうちに慣れてしまった。 一から七までの階層の他に、各階の部屋番号も表示される。その何処にも属さない空白の部分をタップし、パスコードを入力する。 雪島透から仮の管理者権限コードを借り受けており、そのコードを迷いなく入力していけば一階の下に赤く色づいたB1階層が表示される。 それを迷いなくタップし、エレベーターは音もなく動き始める。 対して時間もかからずB1階層へと到着し、長い廊下の先に一つの部屋があるだけの場所へと降り立つ。 「かつての僕ならこの場所を嬉々として訪れていたんだけれどね…」 幼い頃は秘密基地という存在に憧れていた。 しかし今やそれだけでは満足できず、"秘密"と名のつくものすべてを知りたい。調べ尽くしたいと思うようになってしまった。 ーこの世に自分の知らないことなどないようにしたい。 面倒な性格をしていると、自覚している。 しかし、未知なるものを目の前にしては自制がきかないのだ。ークラスメイトである、安藤涼太に対しても沸き上がる衝動を押さえつけるのに必死だ。 「透くんから安藤涼太のことを聞かされた時は、流石に馬鹿馬鹿しいと思っていたけれどー」 あれは未知なるもの。 この百年の間で調べ尽くしたと思った第二の性に関して、安藤涼太はどれにも当てはまらない。 にんまりと笑みを深くし、雪島透が待つであろう大きな扉の前にたちゆっくりと開けていく。 「いきなり呼び出して悪かったよ。ー瑛」 「そうでもないさ、おかげで"約束"を取り付けれた。ーそれで、今日はなんのようだい?透くん」 楽しい楽しい玩具は、最後まで取っておかなければ。 必ずに手に入れる。 自分の手の内に転がりこんでくれれば簡単なこと。もしそうでなければ (体の一部だけでも手に入れられれば、調べ尽くすのに支障はない)
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