第二章 『仮初めの日常』

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「何なんだ…?」 普通の友達同士であれば、逃げ道を作らせないように二人がかりで前を陣取るわけはないし。 普通の先輩後輩であれば、威圧感丸出しにして強制するように距離をつめるわけはない。 ーそれなら。 っとある考えが頭によぎるが、面道事の気配も同時に頭によぎりどうしたものか…っと考え込む。 俺に返るメリットと、俺に降りかかるデメリット。 どう考えてもデメリットの方が大きい。ー相手が一学年上の先輩なうえ、どちらとも体格がデカイ。 吹き飛ばすよりも吹き飛ばされる未来しか見えない。 「放っておくか…?」 特に俺に関係のない相手ならば、ここまで悩むことはなかっただろう。しかし、後ろ姿だけの人物に見覚えがあるような気がしたんだ。 うんぬん考えあぐね、結局後を追いかけることに決めた。 ーはいいが、そういえばあの三人がどこへ向かったか見当がつかない。 歩いていった方向から体育館だとは思うが、昼食の時間にわざわざ体育館へ向かう理由が思いつかない。しかし、それ以外に思い当たる場所がないため取り敢えず向かってみることに。 (いなかったらいなかったで、戻ればいいだろ) くらいの呑気な気持ちで追っかけていく。 まさか、己の価値観を変える出来事に出くわすとは思ってもいなかったのだ。 ――― 案の定、体育館には誰もいなかった。 というより鍵が掛かっているのだ。生徒会なら予備の鍵も持っているだろうが、昼食の時間に鍵を取りに行きわざわざ中に入り込んで鍵を掛ける…だなんていくらなんでもやる奴はいないだろう。 一つの息をはいて、来た道を戻るために足先を変える。 「……ーー!」「ーーーーーッ!!」 ふと、風にのってかすかに言い争う声が聞こえてきた。 聞こえてきた声の出所は体育館側だが、中から聞こえてくる声じゃない。そのもっと向こうー体育館の裏側だろうか。 ーこれ以上先はきっと厄介事だ。 しかし、そうは考えていてもここまで来てしまった手前確認せずに帰るのも忍びない。 「……ーー。」 意を決して、体育館裏に足を運んでみることにした。
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