第二章 『仮初めの日常』

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――― 「そういえば、安藤先輩はお昼は食べましたか?」 一言二言言葉を交わしながら中庭へと戻ってきて、夜渡は唐突にそう語りだす。 「いや…今お前に言われて思い出したわ」 「よければ僕と一緒に食べませんか?実は外で食べようと思って、持ってきたんですが…気が付いたら先輩方に囲まれてしまっていたので、まだ食べていないんです」 ひだまりのように、朗らかに笑う夜渡。 一緒に食べることに対して特に思うことはないものの、なぜそこまで俺に構うのかが疑問である。 自分自身を卑下しているわけではないが、容姿や性格も良いとはお世辞には言えない…と思う。それ抜きにしても夜渡にとって俺は上級生だ。 同学年の生徒と一緒に食べるならまだしも、先輩と一緒に食べるなんて息苦しいと思ったりしないのだろうか。 「別に、俺は構わねぇけど…夜渡は大丈夫なのか?」 「何がですか?」 質問の意図が分からない、とでもいうように首をかしげる夜渡。 「俺と一緒に食べてていいのかって話」 俺の言葉に夜渡は呆けたように黙り込む。 一瞬の沈黙の後、小さく噴き出す声が聞こえて何かと問う前に夜渡は喋りだした。 「優しいんですね、安藤先輩は」 「それはドーモ」 褒められてる気がしないため返事はあえて投げやりに返してやる。 「確かに、いつもなら友人と食べている頃です。けど折角安藤先輩と一緒にいられるんですから、今日くらいはいいんじゃないかなって」 言葉を返しながらもくすくすと笑う声は聞こえてきていて、なぜだろうひどく馬鹿にされてる気分だ。せめてもの仕返しにと歩くペースを速めるが、夜渡に声を掛けられ小さな抵抗もすぐに終わりを告げた。 「あそこ食べませんか?」 っと、夜渡は中庭の一角を指さす。 そこは丁度日陰に位置しており、教室棟からは死角にあたるようで生徒の姿は見えなかった。 あまり目立たないように生活してるために、人が少なければどこでも構わなかった俺は二つ返事で了承した。しかし、返事をして気づくが昼食も何も持ってきていない。 もともと食堂で食べようと思っていたために、手元には財布しかなかった。
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