1 陰陽師と出会うこと

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1 陰陽師と出会うこと

1 陰陽師と出会うこと  ところどころもつれた髪をそのまま背に流して、白い石段を駆けていく。衣は灰茶、帯は桜色、細かな模様で美しいけれど、今の自分には合わない気がする。  脱ぎ捨てて、平地におりて走っていく。  その辺に放ってあった、洗濯済みの簡単な衣を引っ張って着る。右から三番目が自分の普段着だったから、ちょうどよかった。 「姫様~」  のんきげに、後方から呼びかけ声が近づいてくる。 「どこです~? 姫様ー、日和(ひのわ)様~」 (返事なんてしないよ! 宴の途中で飛び出して来ちゃったし)  内心で言い返し、藪に飛び込む。このままではいずれ見つかってしまうだろう。 (どうしよう、神世にいたら、連れ戻されちゃうかも……しばらく、人の世にでもおりちゃおうかな。いい考えかも)  思わず、立ち止まって考えてしまった。  もこもこした髪から、ぱらぱらと、先程突っ切った茂みからもぎとった枝葉がこぼれ落ちる。  姉様達は優しくて、いつも可愛がってくれるけれど、こんなふうに走り回ったりするたびに、ついちょっとだけ比べて落ち込んでしまう。ちょっとだけだが。 「私にも、何かあればいいなーってたまに思うけど……」     
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