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行き止まりは広間になっていた。奥に祭壇が設けられ、しんとしている。
左右には書庫へ通じる扉があり、どちらも開いていて、中で人間が書き取りをするなどしている。
「あぁ、六葉くん」
中肉中背、壮年の男が、柔和な笑みを浮かべて書庫から出てきた。
「御手洗(みたらし)様」
六葉が一礼する。その背をつついて、日和は聞いた。
「この人が、術司って人?」
「少しは、話していいと言うまで黙っていられないのか」
「だって」
御手洗が、少女を見て目を丸くする。
「あぁ……六葉くん、この方は」
「式神です」
六葉が素早く返答した。御手洗が首を傾げる。
「ん?」
「本件の事情を確認しようと思い、近隣の社から力を借り受けました」
「あっ、うん。分かってるならいいんだけど」
「光が作れる程度の、緩い物の怪です。悪意もない。罠の可能性も考えましたが、別段尾行もされていない。問題は少ないかと」
「えっ? 物の怪? 社にいたんだよね?」
「おりましたが。社に借り住まいする物の怪も、世にはおりましょう」
「まぁ、そりゃ、いるでしょうが……」
御手洗が動揺して、日和と六葉を見比べた。
(ですよね? 六葉が変だよね?)
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