第6章 五騎士選抜編

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 そのようなことは全く考えていなかったのでしょう。  リーゼロッテの瞳が揺れているのが分かります。  少しでも伝わってくれるとよいのですが……。   「……そうね。貴方の言うとおりだわ。ごめんなさい」 「いえ、分かってくださればよいのです」 「でもね、アデル。同じようなことがあったら、私はまた同じ行動をとるわ」 「それは何故です?」  心配する者がいると理解した上で同じ行動をとると?  その心理に興味を抱いた私は、即座に問い返していました。 「それは……アデルを他の誰にも……って! 何でもないわっ! ――貴方だって譲れないものはあるでしょう? 私にも譲れないものがあるというだけよ」  何か別のことを言おうとしていたような気もしますが――譲れないもの、ですか。  確かに私にも譲れないものはありますからね。  曲げることのできない絶対的なものが。  リーゼロッテにもあると言うのであれば、強制することはしたくありません。  ならば――。 「承知しました。――ただし。せめて私の目に届くところでお願い致します。私が傍にいるときでしたら、如何なる場合であろうとも完璧にリーゼロッテ様のサポートを致しましょう」 「えっ……!?」  大きく見開かれるリーゼロッテの瞳。  何もそこまで驚くことはないでしょう。  落ち着かせるべく笑みを浮かべ、握っている手に少しだけ力を入れます。 「リーゼロッテ様もたった今、仰ったばかりではありませんか。私にも譲れないものがある、と」 「アデルにとっての譲れないものがそれだと?」 「そうです。まあ、私の場合は両手で足りないほどたくさんございますが」
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