5234人が本棚に入れています
本棚に追加
私の目に届く範囲であれば、いくらでも手助けのしようがありますからね。
無茶をすると分かっている以上、何もしないという選択肢は存在しません。
「ふふ、いいわ。アデルの目の届く範囲でのみにしましょう。――ちゃんと、見ていないと駄目よ?」
「もちろんですとも」
握っていた手を離し、片方の手だけをもう一度取ると片膝をつき、手の甲に誓いの口づけをします。
見上げるとリーゼロッテは顔を赤く染めつつも、微笑んでいました。
後ろの方から、
「うむ! 何とも微笑ましいな。そうは思わぬか? ゼクス、ノイン」
「微笑ましいっちゅうか、めっちゃ甘いコーヒーを飲んでる気分ですわ」
「そうっスね。甘すぎて何というかごちそうさまって感じっス」
という声が聞こえていますが、私は気にしないでおきましょう。
同じく聞こえたであろうリーゼロッテは――ああ、耳まで赤くなって俯いてしまっています。
俯きながら「べ、別にそんなんじゃないんだから……」と呟いていますが、この様子であれば大丈夫でしょう。
さて、対戦相手であったコレットの方はどうでしょうか?
ソフィアが回復させているはずですが――。
コレットの方へ顔を向けると、ソフィアが【女神の癒し手】を発現させた後のようです。
「ソフィア先生。コレット先輩は大丈夫ですか?」
「アデル君。外傷は完璧に治したのです。意識も戻っているのですが、様子がおかしいのです」
「様子がおかしい、ですか?」
コレットを見ると、目は開いているので確かに意識はあるようですが、先程までと打って変わって大人しいですね。
地面に座り込んだまま、一点をボーッと見つめています。
完全に意識が覚醒しているわけではないということでしょうか?
「コレット先輩。お身体の調子はいかがですか? どこか気になるところはございませんか?」
最初のコメントを投稿しよう!