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――その夜。
ソフィアとベアトリスから聞いた話によると、コレットはここ数日の間、自分が何をしていたかよく覚えていないということでした。
気づけば演習場にいて、目の前に私の顔が眼前に迫ってきたので、とても驚いたそうです。
コレットの口調は、リーゼロッテと話していた時とは別人のように大人しかったとも言っていました。
恐らくそちらが本来のコレットの姿なのでしょう。
しかし、全く覚えていないということに疑問が残ります。
彼女が最後に覚えていたことと言えば、後ろから誰かに話しかけられて振り返ったところまでは覚えているそうですが、そこからの記憶は一切ないとのこと。
まるで記憶を切り取られたか、もしくは催眠術にでもかかっていたかのようですが、本人が覚えていないのであれば確かめようがありません。
と、そこでゼクスの顔が頭を過ぎります。
いつもは細く閉じた彼の瞳が見開かれた瞬間、何かを感じたような気がするのですが――駄目です、意識すればするほどに思考が定まりません。
今までのゼクスの言動を振り返ってみれば、彼がコレットに何かをしたのだろうということは何となく想像がつきます。
ただ、問題は何をしたかということです。
少し昼間のことを思い出してみましょう。
そうですね……コレットの外見が変化したこと、本来参加する気がなかった‘赤騎士’選抜戦に参加したこと、そしてリーゼロッテを挑発したことくらいでしょうか。
悪意や敵意といった、負の感情をコレットから感じることはありませんでしたし、少なくともリーゼロッテに危害を加えようとしている風には見えませんでした。
どちらかというと、私に向けられた別の感情であれば、痛いほど感じ取ることができたのですが――いえ、深く考えるのは止めておきましょう。
リーゼロッテを傷つけることが目的ではなかった……?
仮にそうだとすれば、真意はいったいなんだったのでしょうか。
考えれば考えるほど、頭の中が袋小路に迷い込んだようになっています。
ふう、一人で悩んだところで、やはり明確な答えは見い出せそうにありません。
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