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「そうですか……」
ミシェルはそう呟くと目を瞑り、考える素振りをみせました。
正直なところ、二人の親である公王とディクセンが既に決めており、相手となるエステルも了承している以上、ミシェルに選択肢はないに等しいです。
ここで理由なく断れば、親の顔に泥を塗ることになりますし、エステルだって傷つくでしょう。
ただ、気になることもあります。
沈黙が続き、少しだけ重苦しい雰囲気が漂い始めた場で手を上げました。
「口を挟むことをお許しいただけますか」
「いいだろう」
「ありがとうございます。ミシェルとエステル様の婚約は大変喜ばしいことだと思います。ただ、結婚となった場合、エステル様はヴァインベルガー家に嫁がれるということでしょうか?」
「そのつもりだが、何か問題でも?」
レーベンハイト公王家の子どもに男子はおらず、リーゼロッテとエステルだけのはずです。
そのうちの一人を他家に嫁がせるということは、リーゼロッテは嫁がせずに婿を取るという考えですか。
「いえ、お答えいただきありがとうございます」
公王に向かって一礼しました。
「公王様」
それまでずっと黙っていたミシェルが口を開きました。
瞳の奥は、どちらにするか決意したような光を帯びています。
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