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「エステル様との婚約、謹んでお受けします」
「そうか! いや、良かった。なあ、ディクセンよ」
「はっ! ミシェル、よく決断してくれたな」
公王とディクセンは、ホッとしたように表情を崩していました。
自身の婚約ではないにもかかわらず、リーゼロッテとマリーも安心したような笑みを浮かべています。
「アデルの件があったからな。もしも断られたらどうしようかと気を揉んでいたのだ」
「それは、何とも申し訳ございません」
再び公王に向かって、深々と頭を下げました。
まさか私を引き合いに出してくるとは……いえ、仕方ありませんか。
王族の言葉を断るなど、普通は有り得ないことでしょうから。
「よいよい。これで安心してもう一つの話ができるというものだ」
「もう一つの話、ですか?」
「実はな……今日は一人、他国からある人物がやってくるのだ」
公国と繋がりが深い国といえば、やはりオルブライト王国でしょう。
ということは、まさかシャルロッテがやってくる?
「やってくるのは隣国のディシウス王国の使者だ。なんでもリーゼロッテに求婚をしたいと、第二王子が言っているらしい」
「お、お父様! 初めて聞いたんですけどっ」
「当然だ。今初めて話したのだからな」
しれっとした公王の物言いに、先ほどまで笑みを浮かべていたリーゼロッテは凄い勢いで取り乱しています。
その場にいた私を含めた全員が、驚いたように目を丸めていました。
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