第9章 「冬休み編」

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 ディシウス王国はレーベンハイト公国の北に位置する国で、確か今は女王が治めていると聞いています。  "災厄"の際に活躍した五大国には劣りますが、近年はこの女王の活躍により急激に発展しているとか。    年に一度の割合で使者が行き来して挨拶を交わす程度で、特に目立った交流はなかったはずです。   「な……なんとお答えになるおつもりですか?」 「そうだな。私としては受ける受けないは別にして、会ってみてもよいと思っている」 「王子を受け入れるのですかっ!?」 「何をそんなに驚くことがある? 別に他国だから婚姻関係を結んではいけないという決まりはないのだ。オルブライト王国が良い例だろう?」 「それはそうですが……」  リーゼロッテの顔色が悪くなっています。   「求婚を望んでいるのが第一王子であれば、私も断るつもりだった。だが、望んでいるのが第二王子なら話は変わってくる。交渉次第では公国に婿としてくる可能性も考えられるからだ」  リーゼロッテが他国に嫁いだ場合、公王家は今の代で潰えることになります。  実際は、リーゼロッテやエステルの子どもが公王家に養子に入るといった方法もありますから、完全になくなることはありませんが。 「それに……リーゼロッテは現在婚約していないのだしな。私とて娘の幸せを第一に考えている。だが、誰とも婚約していないのに、他国とはいえ王族に対して理由もなく断るわけにはいかないのだ。それは分かるな?」 「……はい」
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