第9章 「冬休み編」

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 リーゼロッテはどこか魂の抜けたような顔をして頷いています。    公王の言い分は確かに正しいでしょう。  身分の高い者であればあるほど、礼儀や形式を重んじるものです。    リーゼロッテはわずかに顔を歪めて私の方を見ました。 「……」  私は息を詰め、唇を噛みました。  リーゼロッテの張り詰めた視線に込められたものを、私は如実に感じ取ってしまったからです。  もしも――私と婚約破棄をしていなければ、もしも、私が婚約を再び結んでいれば、この話が来ることはなかったでしょう。  ですが、私はどうしても言葉にすることができませんでした。   「ディシウス王国の使者とは誕生パーティーの後に会うことになっている。リーゼロッテ、お前も同席しなさい」 「……はい」  力なく頷くリーゼロッテを見て、私は数秒間、かつて覚えがないほど強烈な葛藤に見舞われました。  そして、気づいた時には思いもよらない言葉を選択していました。 「私も、私も同席させてはいただけませんか」 「アデル!?」  ぎょろりと目を剥くリーゼロッテ。  同じようにミシェルたちも目を見開くなかで、公王だけは柔和な笑みを浮かべていました。 「いいだろう。アデルも同席することを許す。ただし、名目上はリーゼロッテの護衛騎士としてだ。よいな?」  それはそうでしょう。  リーゼロッテの隣に同じ年頃の男性が座っていたら、使者の方も不審に思うはずです。    ゆっくり息を吸い、吐いてから、私は口を開きました。 「ありがとうございます、畏まりました」
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