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ロートスが一瞬にしてギョッとしたような表情になりました。
ロートスだけではありません。
私たちの会話を横目で見ていた周囲の貴族も、同じく目を見開いていました。
中には、広間にそぐわぬ素っ頓狂な声を出している貴族もいます。
「正式な書面でも謝罪していただきましたし、お気になさらないでください。きっとロートスくんにも考えがあってのことだったのでしょうし」
「そう言っていただけるとこちらとしても助かります。……さあ、ロートス」
カールに促されたロートスが一歩私達の前に出てきました。
少々むすっとした顔で、カールと私を順番に眺めてから、彼は諦めたようにゆっくりと頭を下げました。
「……この前は、いきなりすまなかった」
「気にしなくてもいいのですよ。ただ、今度来るときは事前に教えてくださいね」
「わ、分かっている!」
ロートスはそう言い返すと、直ぐにカールの隣りまで下がりました。
ふてくされる子供のように唇を尖らせるロートスに、カールはやれやれと言わんばかりに首を振りました。
「まったく……これで謝ったと言えるのかあやしいところではありますが、今日はエステル様の祝いの場です。いずれまた、機会を設けさせていただきたいのですが、構いませんか?」
「それは……いえ、承知しました。まだ学生の身ではありますが、機会があれば是非」
「ありがとう」
そう言ってカールはかすかな笑みを浮かべると、ロートスとともに別の貴族のもとへ行きました。
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