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ただ、その前にしておかなくてはならないことがあります。
二人に向かって優しく微笑みます。
「お城に戻るのは、別件を片付けてからにしましょう」
「「別件?」」
ミシェルとマリーが声を揃えて首を傾げました。
予定通り、こちらを的確につけてくる車輌が現れました。
三台ですか。
「そこでいったん車を停めてください」
道路脇に停車すると、少し離れた場所で後ろの三台も停車しました。
ヴァインベルガー家へと続くこの道は、公都から若干離れた場所にあるため電磁車や人通りがほとんどなく、襲撃を仕掛けるには最適のポイントです。
まあ、公爵家を襲撃するなど相応の覚悟が必要になりますから、普通は考えられません。
普通であれば。
「お兄様?」
「直ぐに終わります。二人とも車の中から出てこないでいてください」
車を降りて後ろに立つと、三台の車からぞろぞろと人が降りてきました。
月明かりのみで暗いことと、距離が離れているため、相手の顔を認識することはできません。
しかしこの敵意には覚えがありました。
お城でミシェルに向けられていたものと全く同じです。
「よい月ですね。それで、私たちになんの御用でしょうか?」
「……」
空に浮かぶ月を眺めながら話しかけるも、誰一人として返事をする方はいませんでした。
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