第9章 「冬休み編」

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「だんまりですか。このまま何もせず帰っていただけるのでしたら、私も目を瞑りましょう」  前方からくる敵意が膨れ上がりました。  どうやら大人しく帰ってはいただけないようです。  相手は複数、対してこちらは私一人。  人通りのない拓けた場所で、逃げ場などどこにもありはしません。  多勢に無勢ですし、私一人を何とかすればどうとでもなると考えているのでしょう。  全く、度し難いです。  物事は、出来る限り迅速かつ穏やかに解決すべきというのが私のモットーではあるのですが、警告に耳を傾けず、あまつさえ可愛い弟に手をあげようとしている者に、これ以上の慈悲は必要ありません。  腐った性根を叩き直して差し上げましょう。    万一に備えて電磁車が狙われても問題ないように、車の周囲にはクラウディオの異能を展開しています。 「帰っていただけないようですので、皆さんには一人残らずここで大人しくなっていただきます。ああ、抵抗してくださっても構いませんよ。無駄ですから」  言い終えると同時に、一人目の身体が空高く舞い上がりました。  レイの"雷を切り裂く剣"を発現した効果です。  空中へ舞い上げられた仲間に気を取られている隙をついて、剣を握っていない右手を近くにいた男の顎目掛けて打ち抜くと、糸の切れた人形のように崩れ落ちました。 「なっ!? か、固まるな! 散れっ」  リーダーらしき男の叫び声で、ようやく他の男たちも動き始めました。
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