第9章 「冬休み編」

54/108
前へ
/799ページ
次へ
 城に到着すると、扉の前に立つ騎士が慌てて近づいてきました。 「アデル様、これはいったい……」 「お父様、いえ、ディクセン団長がまだこちらにいらっしゃるはずです。呼んできていただけませんか。ミシェルが賊に襲われたとお伝えください」 「しょ、承知しました!」  騎士が走りながら城の中へ入ってから数分後。  ディクセンとともに戻ってきました。   「アデル、ミシェルを襲った賊というのは?」 「こちらです」  連れてきた男たちを車から降ろし、ディクセンに見えるように、横一列に並ばせます。  全員意識を取り戻しており、眉を情けなく下げて、ディクセンを見上げています。   ディクセンは鋭い眼光で一人ひとり顔を眺めていましたが、見知った顔があったのか、ある男の顔を見た瞬間、目を見開きました。 「シモンズ子爵、そうか、其方がミシェルを狙うとは……」  シモンズと呼ばれた男は、必死で何かを言おうとしていますが、口を塞がれているせいで聞き取れません。   「囀るな、申し開きは陛下の御前で聞く。ミシェルに手を出したということは、我がヴァインベルガー公爵家だけでなく、レーベンハイト公王家に手を上げたも同然なのだからな」  その言葉に、シモンズはガクガクと震えていました。  シモンズだけではありません。  捕縛されている全ての者が同様に震えています。 「既に陛下は謁見の間でお待ちだ。アデル、お前もついてくるのだ」 「かしこまりました」  先を行くディクセンの後に続き、私はシモンズを引きずって、その他の男たちは近衛騎士が引っ張って、城の中へと入っていきました。
/799ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5234人が本棚に入れています
本棚に追加