第9章 「冬休み編」

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 ただ、婚約発表会の場にいたのであれば、ミシェルに手を出したことが露見したら公王家も黙っていないことくらいは容易に思いつくはず。  襲撃してきたこと自体は間違いありませんが、何故か腑に落ちません。  何より、布で口を塞がれたままのシモンズが必死に首を振っているのが気になります。  他の者も涙を浮かべて、これでもかというくらいブンブンと首を振っていました。  ちらりと公王に視線を送ると、同じことを感じていたのか、公王が頷きました。 「シモンズ子爵の意見も聞いてみるとしよう」  口が自由になったシモンズは、悲鳴にも似た声を上げました。 「陛下、そしてディクセン様。私は確かにミシェル様とエステル様の婚約を妬ましく思っておりました。しかし、襲う気など全くなかったのです。信じてください!」  妬ましいと思ったことは認めるのですね。  襲う気はないと言いつつも、実際には後をつけ、そして襲ってきたわけですが。 「それを素直に信じるわけにはいかぬ。其方らには実際に襲ったという証があるのだぞ。それともなにか。誰かに操られていたとでも言うつもりか」 「そ、その通りでございます! 私はパーティーの後、自分の屋敷に帰るつもりでした。ですが、いつの間にかミシェル様の乗る車の後をつけていたのです!」  シモンズの言葉に、私は頭が痛くなりました。  言っていることが支離滅裂過ぎます。  嘘をつくにしても、もっと他に言葉があるでしょうに……。  ただ、内容とは裏腹にシモンズが嘘をついているようには見えません。
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