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「ディクセン、これはもしかすると……」
「はい、アレと関係しているやもしれません」
操られていたと叫ぶシモンズに、何かしら思うところがあったのか、公王とディクセンはお互いに頷きあっています。
アレとはいったい?
「シモンズ子爵、通常なら公王家に関係のある者に手を出そうとしたのだ。厳罰は免れぬところではあるが、気になることがある。それが判明するまでのあいだ、其方らは投獄する。よいな」
「……はっ」
公王が軽く手を振ると、即座に騎士が動いて項垂れるシモンズたちを連れ出していきました。
扉が閉められたのを確認した私は、思い切って口を開きました。
「公王様、お父様。アレとはいったいどういうことでしょうか?」
「ディクセンよ。其方、伝えていなかったのか?」
「近衛騎士団に関わる重大なことでしたので」
「そうか……アデルよ。かなり前のことになるが、"薔薇十字団"の"顔なし"を覚えているか?」
"顔なし"!?
何故いまここでその名前が?
不思議に思いつつ、私は軽く頷きました。
「学園から"顔なし"を捕らえたという連絡が入った後、私はディクセンに命じて近衛騎士団の騎士を学園に送った。世界の敵と評される"薔薇十字団"の一員だ。ありとあらゆる手を使って他の団員のことを吐かせたうえで、各国に協力を呼びかけたのちに殲滅戦を仕掛けるつもりだった」
「だった?」
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