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「公王様」
「なんだね?」
「リーゼロッテ様はどうされておいでですか?」
「リーゼロッテか、今は自室にいるはずだ。アデルたちを見送ってからずっとな。どうかしたのか?」
公王は少し訝しげな目を向けてきました。
あれからずっと自室に……やはり婚約のことを考えているのでしょう。
私があの時すぐに動いていれば――いえ、今は悔いている場合ではありません。
私は公王とディクセンの前で跪きました。
「公王様、お父様。お二人にお願いしたいことがございます」
「お願いしたいこと?」
「アデルよ、いきなり何を言うつもりだ」
「話す前に。近衛騎士の方々にはご退席いただけないでしょうか。とても大事な話なのです」
私の言葉に、二人は互いに困惑したような表情を浮かべています。
つい先程まで襲撃のことを話していたのですから無理もありません。
しかし、顔を上げた私の目を見た公王は、何かを感じ取ったのか、直ぐ近衛騎士たちに外へ出るように命じてくださいました。
「さあ、この場には私たち三人のみだ。大事な話とはいったい何かな?」
「ご配慮ありがとうございます。では、単刀直入に申し上げます」
「うむ」
「リーゼロッテ様ともう一度婚約を結ばせていただけないでしょうか?」
「そうか、リーゼロッテともう一度婚約を結びたいか――な、なんだとっ!?」
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