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公王はダンっと大きな音を立てて玉座から立ち上がると、信じられないといった目を私に向けてきました。
公王はすぐ隣りに立つディクセンを見ましたが、当然のことながらディクセンも初めて聞いたことなので、何度も首を振っています。
ややあって落ち着きを取り戻した公王は玉座に座り直すと、大きく息を吐いてから私を見ました。
「すまない、少々取り乱してしまったようだ」
「いえ、急なことでしたので驚かれたのも無理はございません」
「そうだな。私の聞き間違いでなければ、アデルがリーゼロッテと婚約したい、と聞き取れたのだが……」
「間違っておりません。確かにそう言いました」
平然とした調子で告げると、二人とも顔を見合わせて驚愕の顔を浮かべました。
「それは、将来的にリーゼロッテと婚姻を結ぶということだぞ」
「もちろんです。私にはその覚悟がございます」
リーゼロッテの人生を背負う覚悟ができたからこそ、婚約を口にしたのです。
終わりを迎えるその日まで添い遂げる覚悟もせずに、軽々しく婚約したいなどと言うつもりはありません。
「今まで婚約をお断りしてきた無礼をお詫びします。そんな私が今さら何をと思われるかもしれません。ですが、私の全身全霊をかけてリーゼロッテ様をお守りします。どうか婚約を許していただけないでしょうか?」
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