第9章 「冬休み編」

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 "学園対抗戦"の時もこうして二人の前で婚約の話が出ましたが、その時は私の方から何度も断りましたからね。  もしかしたら気を悪くして反対される可能性も考えられます。  もちろん、何度でも誠意を伝えるつもりですが。 「許すもなにも、私としては望んでいたことでもあるし、反対する理由など何もありはしない。ただ、あまりのことに驚いてしまっただけだ。なあ、ディクセンよ」 「はっ! アデルよ、よく決心してくれたな」  ディクセンが、いつもからは考えられないほど柔かに笑いかけてきました。  それほどまでに喜ばしいことなのでしょう。 「公王様。リーゼロッテ様にもお伝えしたいのですが、呼んでいただけないでしょうか?」 「おお! そうだったな」  公王はそう言うと、外にいる近衛騎士に呼びかけてリーゼロッテを連れてくるように命じました。  ほどなくしてリーゼロッテが謁見の間に姿を現しました。  ずっと思い悩んでいたのか、リーゼロッテは疲れきったような顔を見せていましたが、私に気づくと表情を変えました。   「アデル!? 確か電磁車に乗って公爵家に帰ったはずじゃ……」 「少々問題が発生しまして。まあ、そちらは既に解決済みです。どうしてもリーゼロッテ様に言っておかねばならないことがあるため、こうして参上しました」 「私に? 何かあったかしら?」  リーゼロッテは首を傾げていましたが、そんな彼女の前まで近づくと、頭を垂れて膝をつきました。  リーゼロッテの白い右手を取り、手の甲に口づけをすると、透明感のある柔肌が僅かに赤くなりました。  見上げると、頬を紅潮させたリーゼロッテに向かってほほ笑みかけます。
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