第9章 「冬休み編」

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「リーゼロッテ様。貴女の残りの人生を私にいただけませんか?」 「……え?」 「その代わりとは言ってはなんですが、私の残りの人生をすべて貴女に捧げます。終わりを迎える最後の瞬間まで、この命を貴女のために使うと誓いましょう。ですから、永久(とわ)に共にいてくださいませんか」  リーゼロッテの頬は熟した林檎のように真っ赤に染まり、キラキラ輝く大きな瞳をじっと向けていました。 「それって……?」  私は立ち上がり、リーゼロッテの右手を両手で包み込むと、続きを口にします。 「私と婚約して、それから――結婚してください」 「……はい」  そっと頷いたその頬からは、一粒の大きな涙が流れました。 「嬉しい……」  ですが、言葉とは裏腹に口ごもったリーゼロッテは不安そうに目を伏せると、体ごとぴたりと擦り寄ってきました。 「アデルと一緒になれるのは嬉しいけど、ギルバート王子の縁談の話はどうしましょう……正式な書状でもって縁談を申し込まれたのだから、このままというわけにはいかないわ」  他国で書状のみとはいえ、王族から求婚されているわけですから、少なくとも放っておくなどは有り得ません。  しかも、書状にはリーゼロッテと面談したいと書いてあったのですから。  婿入りしても構わないという相手方――ギルバート王子の気持ちを考えると、ここはディシウス王国へ出向くのが一番でしょう。
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