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「リーゼロッテ様。ギルバート王子とお会いしましょう」
「アデル……でも……」
「大丈夫です。私もご一緒しますし、何があろうと絶対に私がお守りいたします。既に私の命は貴女のものなのですから」
あの時のような後悔は、もう二度としたくありませんからね。
私がついていくと言ったことで安心したのか、リーゼロッテの表情は和らいでいました。
「ありがとう。貴方が一緒なら私も安心だわ」
「いえ。ですが、お会いするのはなるべく早いほうが良いかもしれません。日が開けば開くほど気をもたせてしまう可能性もあります――公王様。おや? どうされました?」
リーゼロッテから公王に視線を移すと、甘いものを食べ過ぎて胸焼けをおこした時のような顔をしていました。
隣りのディクセンもです。
何も口にしていないはずですが、いったい……?
「いや……若いというのは素晴らしいと思ってな。あのような台詞がすらすらと出てくるのは其方の教育の賜物か、ディクセン?」
「私が教えたと本当に思っていらっしゃいますか?」
「ふ、そんなはずがないであろう。恐ろしい息子をもったものだな。いや、ゆくゆくは私の息子にもなるのか」
二人は見つめ合うと、重々しく頷きあいました。
サッパリ理解できません。
特に恐ろしい息子、というのが。
「ふふ、お父様。この程度で驚いていてはいけません。アデルが本気になったらもっと凄いんですから」
リーゼロッテはそう言うと、何故か自慢げに胸を張りました。
「な、なんだと!」
公王がギョッとしたように目を剥いて、私の頭から爪先までを見ています。
リーゼロッテの言う本気とやらが何を指しているのか分かりませんが、私は私の成すべきことを為すだけです。
それから私は公王になるべく早い時期――できれば冬休み中にディシウス王国でギルバート王子と面談した方がよいことを提案し、結果、一週間後に場を設けていただくことになりました。
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