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第2章 入学初日
使用人達を前にした誓いからの三ヶ月は、とにかく勉強、礼儀作法、異能発現の訓練の日々であっという間に過ぎていきました。
あ、加えて食生活の改善と筋トレも行いました。
流石にあの身体では見苦しいにも程があります。
せめて六十キロ程度にはしないといけないと思い、皮が弛まないように細心の注意を払って一ヶ月十キロを目標に取り組むと、身体は徐々に痩せていきました。
やはり食事の量と適切な運動は大切です。
次第に変化する服のサイズを見て、痩せている実感が湧き、もっと頑張ろうという気になりました。
勉強と礼儀作法も順調だったのですが、異能の発現だけは上手くいきません。
魔力を調べるだけでは、本人がどんな異能を持っているかの判断が出来ないそうです。
人の数だけ異能があると言われているくらい、異能の種類は多いようで、何がきっかけで発現するかも定かではないそうですし、簡単に発現しているのであれば、元のアデルも良い子だったかもしれません。
私を見るお父様とお母様の目は冷ややかなものでしたが、使用人達は最初に挨拶をしたのが功を奏したのか、殆どの使用人が好意的でした。
一部、最後まで私に好意的でない使用人もいましたが、それも仕方の無いことでしょう。
どうしても許せない事だってあるはずですし、三ヶ月という短い期間で人はそう変わるはずもありません。
「そうですよね、ルートヴィッヒ?」
「何がそうですよね、なのか分かりかねます、アデル様……」
「おっと、心の声の続きを貴方に話していたようです、失敗失敗」
そう言って軽く笑みを浮かべます。
私の顔を見たルートヴィッヒは途端に顔を背けました。
若干顔が赤いような気がするのは気のせいでしょうか?
「……アデル様。そのように唐突に笑みを浮かべるのはお止めになった方が宜しいかと」
「? 何故です?」
小首を傾げる私を見て、ルートヴィッヒは大きな溜め息を吐きます。
「アデル様は三ヶ月前とは違うのです。もう少しご自身の御姿というものを自覚して頂きませんと困ります」
「そうですかね? 確かに目標値に痩せはしましたけど、そこまで変わったようには見えませんよ」
「……本気で言っておられますか?」
「えぇ」
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