第二話 つり橋

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 鯛の一本釣りだとかいって意気込んでいたが一向に何も釣れる気配がないまま時間だけが過ぎ、そのうち俺の気持ちと同調するかのように雲行きがどんどん怪しくなって、しまいには季節外れの台風か?というような時化になり、しかたなく一番近くの島に上陸したという次第だ。  まだ時刻は午後四時を少し過ぎたところだが、低く垂れ込める黒雲のおかげで辺りはすっかり暗がりに包まれている。目の前にはちかちかと本土の町の明かりがかすかに揺れている。ほんの目と鼻の先に見えるのにこの嵐ではいかんともしがたいというところが歯痒い。 「と、とにかく釣り船屋には連絡いれて船が出せ次第来てもらうから」 「……」  携帯の電波さえ届く範囲だというのに、それでも、やはり無人島には違いない。  とりあえず、と目についた廃屋に上がりこみ雨風を凌ぐことになった。廃屋と言っても釣り人がちょくちょく訪れるのか意外と綺麗に片付いている。  ハンドタオルで体の水分をざっと拭き取るとやっと人心地付く。  その間にもごめんな、ごめんな、と謝り続ける大型犬はもちろん無視だ。  こんなことなら志賀島あたりでサザエ丼でも食ってたほうがよかった。  いーや、この際、海の幸なんて関係ない。中洲の屋台でラーメンすすってたほうがよっぽどましだった。  そんなことを考えていたら腹がぐぅーっと鳴った。そういえば朝、コンビニのサンドイッチを一つ食べたきり何も口にしていない。 「……腹減った?」     
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