君と

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「ちょっとお腹空いたね。お昼休憩にしない?」 真奈美は携帯を開いて時間を確認しながら言う。 「お弁当作って来たの。サンドイッチとか。食べるでしょ?」 「ああ、そうだな。....ここでか?」 隆司はわざと辺りを見渡すようにして言う。 お昼近くになった吉祥寺駅は朝にも増して人通りが多くなっていた。 「そうね。何処か丁度良いところあるかな。」 真奈美も流石に駅のホームでピクニックはそぐわないと思ったのか、困ったように眉をひそめる。 「なら、近くに井の頭公園があるから、そこで食べよう。」 隆司が言うと、娘は表情をパッと花のように開いて嬉しそうに頷いた。それは貴子の得意としていた表情で、やはり母娘だなと隆司は思うのだった。 吉祥寺駅から井の頭公園まで歩きながら、隆司はかつて貴子とデートした頃を思い出す。 デートの時は、決まって貴子が行きたい場所に行き、貴子が食べたいものを食べた。 隆司は彼女が好きなことを好きにする振る舞いが素敵だと思った。 「ママとのデートを思い出す?」 真奈美はニヤニヤしながら聞く。 隆司は通りを歩きながら真奈美に貴子が好きだったものを教える。 快晴と輸入雑貨の店と甘いパンケーキは彼女のお気に入りだった。
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