良心に背き続けた男

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裁判官のような役目の岐司は言動こそ穏やかだが付け入る隙はない。 どうにか状況を変えようにも弁護してくれる者はなく、完全なる証人により惚(とぼ)けることもしらばっくれることもゴネることも能(あた)わない。 「そんな!人を殺したのは悪いことですが前の世界でも一人なら懲役7年てとこですよ!」 「殺人でも防衛のためのものから過失、そして己が利益だけのものでは当然罪の重さは変わります。 しかも貴方は私利私欲の為だけに恩もあるはずの美智枝さんに感謝の心もなく、あろうことか仇としたのです。 人の生は幽波を高めるための修行だと先程説明しましたが、貴方は何の権限もなく美智枝さんのそれを死に至らしめて阻害しました。これは人の天命を決める“大いなる存在“に対して僭越行為を犯してもいるのですよ。 また、貴方は自分をも殺しました。 人は現世に於(お)いて食べなければその生を維持できません。そのために多くの生命を犠牲にしなければならないのですが、自殺はそれに対しての非礼に当たります。
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