良心に背き続けた男

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美智枝は地味な女でしかも残念な容姿の持主だった。 研次も彼女に全く興味を持っていなかったが、ある時彼女が小規模ながらとある企業の令嬢だと知った。 それ以来、彼は自分の感情ではなく金銭目的だけで巧みに彼女に近づき、やがて結婚に至った。 その目論み通りに研次は義父の企業に潜り込み、更には借金の肩代わりという恩恵も受けた。 新天地での研次は表向きの人当たりの良さを活かし、営業で頭角を現すと徐々にその地位を確立していった。 コネでの入社ではあるが支店の営業部長まで昇格できた実績は本人の自負するところである。ただ、その企業は悪徳リフォーム業者だった。 研次は持ち前の特技で言葉巧みに点検を装ってターゲットである高齢者に近づき、不安を煽る詐偽紛いのことから酷いものでは認知症の老人に恫喝するなど犯罪と呼んで差し支えない仕事ぶりだった。
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