良心に背き続けた男

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さらに彼は家庭を顧(かえり)みることをせず、妻を大事にすることもなかった。 元々好きで一緒になったわけでもない美智枝に愛情などあるはずもない。 それでも婚姻を続けるのは彼女が勤め先の創業者の娘であることと遺産目的でしかない。だから研次は彼女には毒づいたりしないが必要以上のコミュニケーションも避けていた。 結果的に彼は極力自宅を避け、休日はなるべくゴルフの予定を入れ、平日は仕事が終わると部下を連れて飲み歩いた。 その行為は役職者として部下からは厳しくも気前の良い上司というイメージを植えつけることと美智枝に帰宅の遅さを黙認させる両方の役割を上手く果たした。 そして供述は最終局面へと近づいてゆく。
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