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ここで常導神が声を詰まらせ呻く。
原因は新たな体の異変にあった。
彼の胸に針金で引っ掻いたように“不義密通”の文字が血文字となって浮き上がる。さらに錘が首輪のように嵌められ、彼は顔を顰(しか)めた。
それでも岐司は微動だにせず、常導神も辛そうに供述を続けた。
真知子がその事実を知っていればこの関係は成立しなかっただろう。彼女は人のものに興味はない。
だが、彼女は老獪(ろうかい)な研次の嘘に騙され、毒牙にかかってしまった。
真知子は結婚願望の強い女性ではなかった。たとえ身を固めることになっても仕事を続けたい意識を持っていた。
だから研次と関係を持っても結婚など迫らない。
これは研次にとっても好都合だった。
彼は帰宅すると色々と詮索する妻を疎ましく思っていた。
容姿も性格も全く正反対の二人に片や熱い想いを寄せ、残りには憎悪を内に秘めていた。
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