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『~!!~!!~!!~!!』
内臓破裂、骨折、割創、挫滅創、列創など、容赦ない痛みの群れに研次は逃げるどころか悲鳴すら上げられない。
朗らかだった真知子の声が今の研次には戦闘機が放つ轟音のように聞こえる。
人間としての記憶を持っている特別な存在だからか、彼はそれが何を言っているか理解できるし痛覚も機能していた。
「起き抜けからゴッキーなんて・・最悪!」
もし、人間としてここまでの大怪我なら即死か、死なずともエンドルフィンが分泌され、最早痛みを感じないだろう。しかし彼はゴキブリなのだ。
卓越した能力を有するが、想像を絶するその生命力が彼を辛苦に縛りつける。
自分の意思とは関係なく、触角だけが絶え間なく動き続けるがそれは人間にとっては悍(おぞま)ましいものにしか映らない。
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