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岐司はそれを理解して欲しいのだが、この階に来る下級な亡者は押し並(な)べてその心薄く、最後は大体こうなる。
違いがあるとすれば坊鬼に打擲(ちょうちゃく)される回数くらいである。
自分の落ち度を認めない、またははぐらかすような者は研次のように自分の常導神によって追い詰められ、最後には誇りを投げ出して命乞いに近い態度を取り、険しい来世を受け入れようとはしない。
その全者一様に岐司は辟易としている。
ここからの展開は保留になるか、取り乱して強制送還になるかが相場だった。
「羽黒さん、とりあえず保留にしますか?少し頭を冷やすのもいいかもしれませんよ。
ただ、猛烈な飢えと乾き、それに加えて前世より以前の記憶も少しずつ甦り、貴方を苦しめるかもしれませんが・・」
取り乱すに近い状態で空腹どころではない研次だったが、屋台での空腹感の強さは現世より強かったのを覚えている。
それに岐士の提案が呼び水となって広場での亡者達の姿を連想させた。
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