嘘のその先に―晃Side

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 「おはようございます。晃さんは、眠れましたか?僕、ベッドを占領してすみませんでした。寝相悪くてこんなところで寝たんでしょうか?それとも僕と一緒に寝るの嫌でしたか?」    (あぁ…。こいつ、かわいい。このまま食べてしまいたい…)  『一緒に寝てもいいのに』と、1mmたりとも邪な気持ちも含まれていない。そんな無垢な彩に見つめられると、自分の頭の中の考えてることが急に恥ずかしくなってしまった晃は、バツの悪そうな苦笑いしか彩に向けることができなかった。  このまま、彩と対峙していたら、おでこではなく、今度は口にキスをしてしまいそうだと思った晃は、コーヒーを入れると立ち上がってキッチンへ向かう。  ミルクと砂糖多めがいいと主張した彩もかわいいなと思いながらコーヒーを入れる準備をした。 ****************************  土曜日の今日は、一緒にこのまま過ごそうと思っていた晃は『今日はどうするんだ』とコーヒーを飲みながら、彩に問いかける。  それなのに、彩は昨日告白されたヤツと向き合うために、今日か明日会いたいと伝えたから家に帰るという。恋敵の為に自分が蔑ろにされるのがおもしろくなかったが、あんなに泣いて悩んでた彩に、嫌だ行くなと子供みたいなことは言えなかった。  明らかに大人の包容力が欠如していると思われてしまうだろうが、これくらいなら問題ないだろうと、少しだけ釘をさしておく。  「俺の知らないところで会うとか聞くと、すげー、嫌だ。それに、相手はお前の事が好きなんだから、万が一押し倒されたら心配だし、どうするんだ?!」  「大丈夫ですって。心配しないでください。僕も、大人なんですから、自分の事は自分でできますよ」  『ぼーっとしてるから心配なんだろうが!』と喉元まで出かかったがどうにか抑える。  心配していた俺を見かねてか、彩が『終わったら電話する』と言ってくれただけ、大進歩だ。少しずつ、少しずつ俺のテリトリーへ囲い込むのに成功しているのかもしれない。  彩が頑張ろうとしていることを止める権利はないなと思い、しかたないと思いながら少し眉間に皺をよせた顔で彩を送り出した。
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