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真治と別れた後、ずーっとスマホのディスプレイとにらめっこをしている。
アドレス帳を見ては、ため息をつき、何度晃の電話番号を見つめて発信をタップしようと思っても躊躇ってしまう。スマホのディスプレイに映ってる彩の顔は、頼りなさげで不安な顔をしていた。
真治に教えてもらったこの気持ちに、名前がついて自覚してしまったら、今まで普通にしていたことさえも臆病になって出来なくなるものなんだと、『恋』という新しい気持ちの存在を彩は持て余していた。
(真治も、僕に対してこんな気持ちだったのだろうか。なのに、今までと一緒のように接してたなんて…すごい…)
彩は、あらためて真治の恋愛スキルに感心をする。
自分は、真治みたいにいつも通りに晃に接することが出来るのだろうか。
自分が晃と次に会った時にどういう風になるのかがわからなくて、約束してた『真治と会って終わったら電話する』という約束も果たせないまま、ずっとスマホを眺めている。
何度目かの大きなため息をついたとき電話が鳴った。
プルルルルルルル………………
「あっ…」
彩に電話をかけてくる人は、家族か真治か晃か、会社からかの数える人しかいない。
こんな時間にかけてくる人は一人しかいないと思い、ディスプレイに目を落とす
「あ、晃さん……どうしよう」
自分から電話をかけたなら心構えもできたものの、不意打ちの電話に彩は焦った。
居留守をきめこもうかとも考えたが、フルフルと頭を横に振り、そのまま俯いて深呼吸のあとゆっくりと震える手で『受話』ボタンをタップした。
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