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「あ、晃さん、どうして連絡を僕にくれたんですか?」
「お前が連絡が遅いからだろっ。なぜ、終わってすぐ連絡してこないんだ?」
「あ……ごめんなさい。僕……」
「で、アイツに何された?」
「えっ??」
「だから、アイツに無理やりなにかされたんだろ。沈んだ声を出して、今だって泣きそうな顔してる。お前もな、連絡が遅い。すぐ電話する約束だっただろーが。やっぱり一人で行かせるんじゃなかった。クソッ!!」
そう言うと、晃は『チッ』と舌打ちをして、さっきよりもっと深い皺を眉間に刻んでいるのを見た彩は、晃のその言動に驚いて顔をパッと上げ晃の袖を掴んだ。
「ぼ、僕、な……なにもされてないです。真治にはなんにも……」
彩はそれだけ伝えると、恥ずかしそうに自分の膝に目線を落とした。
「はぁ?お前、ウソつくなよ。いつだって、我慢して何も言わないじゃねーか。アイツを庇いやがって。今回だって、言えない、我慢できないことをアイツにされたんだろ?とりあえず、アイツの家、教えろ。俺が……」
彩は、掴んでいた晃の袖をクイックイッと引っ張った。
「ち、違うんです。真治には、なにもされてないんです。きちんと話をして、いままでの関係でいようってことになりました。だから……真治の家に行く必要はないんです」
「は?じゃあ、なんで……」
「…………」
彩は、次に伝える言葉が思いつかない。
素直が一番って真治はいってくれたけど、自覚したばかりの恋心を伝えるには、まだ早いんじゃないかと思った。
自分でも熟しきってない恋心を押しつけるときっと晃を困らせてしまう。
「もー。晃さんも僕に対して過保護過ぎますっ」
そう泣きそうな笑顔で伝えるのが、今の彩には精一杯だった…… 。
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