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晃さんの顔を見るとなぜか辛くなる。
恋っていろんな感情が入り乱れて、今まで普通にしてたものが出来なくなってしまって、自分が自分じゃなくなるようで怖いと感じた。
普通にしようと取り繕っても、今の自分の恋愛スキルがレベル0.1くらいだと、普通に接することも出来なくて、表情も作ることさえも出来ない。
この調子で本当にこの恋心を育て上げることができるのかと不安になるが、とりあえず、不本意な形で淡い恋心がバレることだけは避けたいと彩は思った。
「お前……。泣きそうな顔してるのに、説得力ない。本当は色々されたんじゃないのか?」
「いえ。本当に、話してみるとやっぱり真治は素敵な人でした。思いやりもあって、僕のことを一番に考えてくれて、僕にはもったいないくらいの友達です。だから本当に心配すること何一つないんですよ」
何度も同じやり取りを繰り返していたのに、晃が急に無言になった。
彩は不審に思い顔を覗くと、明らかに眉間に皺を寄せ、不機嫌な怖い顔をしてる。
今のやりとりのどこが晃を不機嫌にする要素があったのだろう。同じやり取りをしたからだろうか、それなら何度も同じことを聞いてきた晃にも非があると思った。
しかし、車という密室空間の中で重苦しい雰囲気が流れ てしまい、この空気感に耐えられなくなった彩は晃に話しかける。
「晃さん?」
「…………」
「晃さん?何か僕してしまいましたか?」
「面白くない。明らかにアイツの肩を持ちすぎだろ」
「はい?」
「だから、彩は俺が心配してるのに、それ以上にアイツの肩を持つのが気いらない。俺がこんなに心配したのに、お前はアイツばかり褒めるし。俺はなんなんだ?心配してやったのに褒められないのか?」
「えっ?そこ?褒めて……とか、晃さんは、子供ですかっ?」
このわがままで自分が一番じゃないと嫌だと思ってるかわいい年上の友達の言動が、さっきまで重く考えていた自分の気持ちを少しだけ落ち着かせていく。
そして、不機嫌なまま運転しているこのかわいい年上をニコニコしながら、彩は見つめていた。
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