恋をはじめました

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 「晃さん……、僕ね、あ、晃さんが一番ですから。本当に一番ですから……」  この言葉でどのくらい晃に伝わるかわからないが、今、彩が抱いている『好き』という気持ちを精一杯込めて伝えた。    「あたりまえだろ」  プリプリしながらぶっきらぼうに晃は答えるが、顔を見たら幾分不機嫌さが和らいだ気がする。  彩は、そんな晃の態度も愛おしいなと思った。  「ふふふ。晃さんってなんだか、かわいいですね」  「大人に向かって、かわいいとかいうな。お前の方がかわいいだろっ!俺はな、大人の男なんだから、カッコいいという方がシックリくる。それに、カッコいいってお前に言われたいんだからな」  「なんですか、それっ」  車の中に彩の笑い声が響く。  恋愛については、いまいち分からないが、この眉間に深い皺を刻んでいる愛おしい人の隣で、ずっとこのまま笑っていられたら幸せだなと思う。   (晃さん僕、勉強しますから。恋愛の勉強して、ちゃんと気持ちを育てて、いつか気持ちを伝えてもいいですか。そして、うまく伝えることが出来たら、褒めてください。『お前にしては上出来だ』って。それだけで僕は十分ですから……)  晃と気持ちが交わらなくても、きっと自分自身が後悔しなければ真治みたいに、この初恋に対して満足できるのではないかと彩は思った。
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