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「あれ?最近、黒須さんって憂いの表情多いっ!」
隣のデスクのみるきぃが、椅子を滑らせながら彩に話かけてきた。
みるきぃに言われ自分の態度を振り返って考えるも、そんなつもりはない。それに今日だって平常心を心がけてミスがないように仕事していて、部長にも呼び出されていない。
「よ、吉田さんっ、そんなことないよ。僕のいつもの俯いてる自信の無さってやつでしょう?」
「ふふふ。違います。表情の問題!もしかして、林さんに告白とかされちゃいましたぁ?」
「えっ????な、な、なん…でですか?それ」
「あっ、黒須さんの動揺半端ないですー」
「ち、ちが……」
あいかわらず、みるきぃの観察眼はすごいなと思った。
本当に色々と敵に回すと恐ろしい人なんだろう。
「いいんですよ。みるきぃは、そういうのに偏見ありませんから」
「偏見?」
「男同士もアリってことです。お互い好きならいいんじゃないですか?」
「え……。そういうものですか?」
「はい。まぁ、みるきぃは、男性が恋愛対象ですけどぉ、男同士でも女同士でもいいと思いますよぉ」
「あ、あのー、こんなこと聞いていいのかわからないのですが、吉田さんって、恋愛経験って豊富ですか。恋人とか……」
「まぁ、それなりに。今はいないですけど、恋はいつもしていたい派ですよぉ。恋多き女…みたいな?」
彩は、もしかしたらみるきぃなら、いろいろ知っていて恋愛のいろはを教えてくれるかもしれないと思った。
しかも、男同士に偏見がないと本人は言ってるのだ。
頼ってもいいものだろうか。恋も多くしてきたと本人も言っていたから、様々な恋について学ぶことが出来そうと思い、少しだけ一筋の光が見えた気がした。
勇気を振り絞って、みるきぃに話しかける。
「よ、吉田さん……あの、相談があるんですが……」
みるきぃに相談を持ち掛けてみると、「プライベートで詳しく話聞きます」と、笑顔で快諾してくれた。
今夜、早速ご飯に行きましょうと誘われ、彩も予定もなく、しかも自分から誘った相談事だ。断る理由もなく、むしろ早く知りたかった彩は素早い展開が嬉しかった。
そして、みるきぃと仕事終わりに食事の約束をして再び仕事に戻ったのだった。
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