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「黒須さん、黒須さんーこれ。」
彩は、終業後に声をかけられてみるきぃの方を見ると、おもむろに紙袋を差し出してきた。
そのままその紙袋を受け取ったところ、ずっしりとした重みがあった。
「吉田さん、これなんですか?」
「昨日言ったじゃないですか?例のいい物ですよぉ。今日は寄り道しないで早く家に帰って開けてみてくださいねっ。きっと、黒須さんのお勉強に少なからず役に立つはずです。あ!ちなみに、会社や電車で見るのは厳禁ですよ」
「はぁ……。そんなに見せちゃいいけないものなの?」
「ふふふ。感想聞かせて下さいね。みるきぃは、黒須さんのこと楽しみでしかたがないんですからねっ」
彩は、みるきぃから受け取ったずっしりとした紙袋を見ながら、首をかしげていた。
家でしか見ちゃいけないもの。
恋愛の勉強に役立つもの。
感想を聞かせてほしいもの。
この袋の中には何が入っているんだろうと思ったが、彩のために考えてくれているのが嬉しいと思いながら、みるきぃの優しさを噛みしめていた。
家に帰り自分の部屋に入った彩は、みるきぃに渡された紙袋をテーブルの上に置く。
そして、スーツを脱いで部屋着に着替え、貰った紙袋を開けると、四角い物体に厳重に包装紙がぐるぐると巻かれていた。
剥がそうかと彩が手にかけた時、かわいらしい猫の封筒が入っていた。
「吉田さんからの手紙?」
彩は、封筒を開けて手紙を取り出すと、猫の形の便せんいっぱいに文字が書いてあった。
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