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夕方からアイツに会うという連絡が来て、すでに時計の針は22時をまわっていた。
終わったら電話すると言って今朝別れたはずなのに、待てど暮らせど連絡が来ない。
晃は、部屋の中でイライラしながらリビングとキッチンを行き来して、すでに何往復したかわからず、スマホを見ては、彩からの連絡がないことに落胆し、ソファーにドカッと座って天井を見上げてため息をつく。
もしかしたら、本当にアイツに無理やり襲われてはしないか、気が弱い彩は押し切られて付き合うことになってないか……考えれば考える程、昨日、晃のものにしてしまえば良かったのかもしれないとまで考えが及ぶ。
そう思うたび、彩を大切にしたいという思いで温めてきた恋心が、本当は無駄だったのではないかと思ってしまう。
少しずつ晃へ心が向いてるのが分かっているも、もどかしさでどうにかなりそうで、髪の毛を掻きむしる。
こんな時、どちらか片方がきちんとした恋愛経験を積んでいれば違ったんだろうとも思う。きっと彩は、俺が初めてまともに恋をしてるってことすら知らない。
百戦錬磨とか思われてそうだな……と自嘲気味に晃は笑った。
結局、そのあと30分迷った末、電話が一向に来ないことに痺れを切らした晃がスマホをタップして電話をかける。
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