苦々しい思い

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結局、仕事も捗らず2時間近く残業してみたものの、彩は使い物にならなかった為、今日の業務はあきらめて家に帰ろうとデスクを片付けだした。 あの午後の光景を思い出しては、ビクッと震え、胃のあたりがムカムカして気持ち悪い。 バカにしたような口調に腹立たしさを覚え、でもこれ以上近くに寄ってはいけないという警戒信号みたいなものを感じている。 (はぁ。最悪だな・・・。 でも、専務が経理部と接点がないって部長が言ってた! すれ違うこともないだろうし、忘れてしまえばいいんだよね。そうだ!そうしたらいい!!) 彩は、良いことを思いついたという風に、デスクから顔を上げて笑顔になった。 「さぁ、帰ろう。まだ月曜日だもんね。あと4日もある!」 椅子から立ち上がり、カバンを持って経理部のドアを開けようとした。 ドンッ!!! ドアを開けた瞬間、黒い大きな物にぶつかった。 「つぅ・・・。」 (人?!あー、ぶつけちゃった。やっぱり厄日だ) 「あ、すみませんでした。大丈夫ですか?」 彩は、ドアをぶつけてしまった相手の膝を摩って、心配そうな声を上げた。 「あぁ。大丈夫だ」 低い声が聞こえ、ホッとした彩は俯むいていた顔を上げた。 その相手を見て、目を見開いた。 もう接点がないと思っていたあの人がそこにいた。
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