苦々しい思い

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 結局、火曜日から木曜日まで彼に会うことはなかった。  それは、当然といえば当然で、彼がいつもいる重役室は経理部のある5階ではなく、20階という高さで、エレベーターも重役専用のエレベーターがある。  だから、月曜日はたぶんわざわざ彩に会いに来てくれたのだと思う。  そう考えると、ますます彼に悪いことをしたなと思った。  彼への自分の態度を思い出すと気分がふさぎ込んで、彩の猫背度合いもそれに比例して深い猫背になってしまっていた。  「黒須ー!なぁーに落ち込んでるんだよ」  颯爽と明るい声をあげながら真治が経理部にやってきた。  あぁ、一気に経理部が華やいだ。  イケメンって空気さえも変えてしまうもんなんだなと思った。  「どうしたの?今日はなんか用事?領収書の話とか?」  「いやいや違う!なんかさー、出張から帰ってきたら噂を聞いてさ、心配してやってきたんだよ」  「は?噂?」  「お前と専務の話」  「え?専務とは接点が無いんだけどなんで?」  お前知らないのか?という不思議な顔をして真治は彩を見ていた。  思い当たる節がなかった彩は、きょとんとした顔をしながら、真治を見た。  「月曜日、専務の胸に倒れ込んで、顔を赤らめていたって」  彩は、デスクに両手を付き勢いよく立ち上がった。  「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!なにそれ!!!!」  真治は、びっくりして、口元に人差し指をあて静かにというポーズをとっている。  彩は、肩を窄め椅子に座りなおした。
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