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今週の一番気がかりだった出来事のメールの送信も終わったし、思い残すことはないと思い、今度こそ帰り支度をして彩は自分の席を立った。
スマホを見たら、女王様その2の里実姉から、メッセージが来ていた。
うんざりしながら、そのメッセージを開く。
『帰りにDVD借りてきて』
レンタルショップは家の反対側の出口なのに・・・とまた肩を落として、『わかった。何を借りたらいいの?』と急いで返信をしてから、経理部のドアを開けた。
人使い、いや弟使いの粗い姉たちの命令に結局は逆らえないなと思いつつ、俯いてエレベーター前までやってきた彩は、エレベーター前で黒い人影がいるのに気づいた。
(あれ?あの背格好だと、真治かな?今日約束してないんだけど、まさか昼の続きで待ち伏せとか?どうしよう・・・)
そう思いながら、エレベータに近づいた瞬間、想像していない人がいた。
彩は、エレベーターの前でその人物を見上げ、うまく足を動かすことが出来なかった。
「せ、専務?」
専務は、彩を見据え口を開いた。
「黒須君、いつなら大丈夫なんだ?」
「え?!ぼ、僕・・・お断りさせていただきましたよね。先ほどメール・・・」
「いや、遠慮はいらない」
ガシッと晃は彩の手首をつかみ、力強い目で彩を見下ろした。
急に、鋭い目で見られた彩は、目を合わさないようにますます俯いて小さくなっていた。
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