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日本に帰ってきて、日本食がどうしても食べたくて、金曜日に和食料理屋に1人で行った。
食べ終わって煙草を吸いながらボーっとしていたら、どこからか迷い猫がやってきた。
声を聞いて迷い猫の風貌を見たら、隣の部屋で話していた男だと分かった。
話していた内容通り、猫背で、オドオドしてるのに、心の中では自己主張があって、一目で『かわいいな』と思った。
少し、からかってやったら、毛を逆立てて行ってしまった。
懐かないところも可愛くて、不思議とまた会いたいなと思った。
そして、月曜日に社内の挨拶回りをしていたら、偶然に迷い猫に再び会った。
一生懸命背筋をピーンとしていたのに、いつの間にか猫背になっていて、ビクビクして面白い。
そして、ちょっと手を出すと、毛を逆立てて警戒心丸出しで。
こんな可愛い生き物に出会ったことがない。
犬派か猫派かと言ったら、猫派で小さいころから実家では猫を飼っていたのだが、なぜか俺が近寄ってくと逃げてしまう。
そういう所も猫のいいところで可愛いのだが、つくづく黒須彩という男が、猫っぽくて可愛いなと感じていた。
(どうにか仲良くなれないか・・・)
仕事中もぐるぐる思案していたら、何度も酒井に「顔が怖い」と注意されてしまった。
顔が怖いのは生まれつきだし、38年間培ってきたしゃべり方も今更変えることはできない。
残業中の待ち伏せをしてせっかく俺から遊びに誘ってやったのに
『け、結構です!!!!』と叫んでカバンを抱えたままダッシュしていってしまった。
(からかいすぎて、嫌われたかな・・・)
メールしても社交辞令の返事しか来ないもんだから、今度こそ逃げないように囲い込むように、誘い込んだ罠。
エレベーターで逃げられてしまったから、エレベーターの前で待ち伏せした。
「今日、予定は?」
「な、ないですけど。でも・・・」
「ないなら、行くぞ。」
「姉にDVD借りてくるように言われたので、家に・・・」
「そんなの、明日でもいいだろっ!」
そういうと、ビクッと震えていた。
震える姿がかわいい。
怯えながらどうにか逃げようとしている可愛い猫を、捕獲した。
少しずつこの猫を飼いならせないかと思いを巡らせながら・・・。
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