長い夜-晃Side

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会社のエレベーターの前で強引に彩を連れて、俺の車に乗せてとりあえず車を走らせた。 毛が逆立ってる子猫は、ずっと窓の外を見て、時折視線を膝に向ける。 何が気に入らないのかわからないが、俺に対してずっと威嚇してるようだ。 俺が彼のことを可愛いくて、気に入ってるからって言って誘ってるのに、意味が分からないとずっと言っている。 激しく鈍感な生き物なのかもしれない。 それはそれで可愛いなと、口の端が自然と緩む。 大の大人が口の端が緩むなんてみっともないと思い、彩を見つめながら、眉間に皺をよせ顔を引き締めた。 レストランに入って、少したってから『ぶっちゃけてもいいか』と急に心を開いてきた彩に晃は心が躍った。 ようやく打ち解けようとしてくれたのかと思ったのに、彩の口から聞こえたのは残酷な言葉だった。 「その態度なんですが・・・、気に入ってるように見えません。ぼ、僕は専務に恐怖しか感じません。月曜日やメールで断ったことも、遠慮ではなく嫌だったんです」 「嫌・・・?遠慮ではなくか?」 まさか、嫌われてると思わなかった。 かなり、わかりやすく愛情表現したはずなのに、全く伝わってなかったらしい。 いままでの行為は独りよがりだったのかと、目の中に動揺の色が走った。 「え、遠慮ではなくです。専務は、気に入ってると言いましたが、ただ威圧的で僕を怖がらせてるとしか思えなくて・・・一緒にいる今でも泣きそうです」 彩を見ると、目に涙をためながら震えて一生懸命俺に語りかけていた。 やっぱり、なにもかにも独りよがりだったのだ。 晃は嫌われる行為をしたつもりもなかったが、嫌と思うことを永遠としていたことになる。 胸が締め付けられるように苦しかった。
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