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「晃さんは、告白されたことありますか?」
「は?」
「告白です」
「まぁ、38年間生きてきてるし、それなりにな」
「僕は、27年生きてきて今までないんです。付き合ったこともなければ、あの、その…ど、童貞でもあって…」
「ん。」
「そんな僕のことが好きって人が、現れたんです」
話を聞く限り女の影もなければ、接点を持つことも皆無だと思ってた彩に、好きと言った女がいるってことか?とビックリし、目を見開いて彩を見た。
「お前のことが好きな女か?どこで出会ったんだ?」
「ち…ちがい…ま、す」
「違う?出会ったんだろ?」
「お…と、こです」
消え入りそうな声で彩は呟いた。
ますます身体が膝に頭が付きそうなくらい丸めて小刻みに震えている。
「あの男か?」
「あの男?」
「お前のもう一人の友達と言ってた奴だよ」
その答えに驚いて顔を上げ、晃の顔を見た。
「な、なんでわかるんですか?晃さんはエスパーとかですか?」
「お前バカか?あんなに俺に敵意むき出しにしてきて、お前の事を大事にしててそれ以外考えらんねーだろうが!」
「あ、そういうもんですか…。さすがモテるだけありますね。」
彩は、感心したように晃の顔を見た。
「で、どうすんだ?」
「どうする…?」
彩は不思議なことを言うなと思いながら晃の顔を見ている。
そんな彩を眉間に皺をよせて、苦々しい顔で晃は見つめていた。
「お前は、男に告白されて泣くくらいショックだったのか?」
「いえ。男に告白とかはいいんです。よくないけど。でも、世間ではそういうのもあるって知ってますし。ただ友達だった人に告白されたのがショックで…」
「男女だって、友達から恋愛に発展することはあるだろ?それが男同士だったってだけだろうが」
「そうかもしれませんが…ぼ、僕は、真治が、あ、その友達は真治って言うんですけど、僕が友達だと思ってる間、いつから好きだったのかとか、これを彼にとっては不本意な形で僕が知ってしまって、もう二度とあの関係に戻れないんじゃないかとか…」
晃は、彩の頭を撫でた後、頬に手をあてて泣きそうな瞳を見つめる。彩は、晃のその行動にビクッとしながらも真剣な目をそらすことが出来なかった。
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