恋と嘘

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「お前はその友達が大好きなのか?」 「友達として…。あっ、晃さんが一番ですけど、でも……」 「でも?」 「真治は、僕の欠点ばかり好きだといったんです。僕は、真治が好きだといってくれたことは自分の嫌いなところで。それも嫌で…。欠点ばかり好きってどういうことなのか分からなくて、ダメな僕だから、いいところがないから好きなのかと思うと……」 「でも、考えてみろ?そいつは欠点を愛せるくらいおまえを好きってことなんじゃないか」 「はぁ……」 「あー、そいつで悩んでる彩が嫌だわ。ムカつく。彩は、俺のことで悩んで俺しか考えらんなくなればいいのに」  そういうと晃は彩を抱きしめた。  その腕の隙間から、彩は真っ赤になりながら晃の顔を見上げる。 「なっ、なんですかそれ。」 「そのまんまの意味だけど?」 「僕は、真剣に悩んでるんです。大切にしてきたものが崩れることに恐怖も感じて、すべて手から零れ落ちそうで……」 「それをさ、そのまま伝えてみろよ。」 「そ、その……まま?」 「お前のことを好きって言った真治というヤツは、それくらいで縁を切るやつなのか?関係を変えてしまうやつなのか?」  晃に抱きしめられながら首を横に振った。  真治はそんな人じゃない。それは、いままでの5年間で十分すぎる程わかっていた……。  わかってはいたけど、彩はもしかしたらと思うとすごく怖かった。だから、逃げ出してしまった。  卑怯なヤツだと自分でも思っていたから、辛くて苦しくて、どうしたらいいかがわからなかった。それなのに、この大人でかっこいい人は、いとも簡単に彩の心の中の深いところまで入っていく……。  なんて素敵な人なんだろうと、僕の友達にはもったいないくらいな人だと改めて彩は思った。
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