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背中を押して欲しかったのかもしれない……。
自分の胸のつかえが取れたように感じ、晃の服を掴み胸に顔を埋めて泣きじゃくった。
「あぎら……さん……。うー、ひっく、ぼ、僕…あぎらさん、や、優しい…うー。あ、ありがとぉ…真治にきちんと伝えてみる……」
「おー、泣け泣け。気持ちを吐き出すのが一番だ」
晃は、彩の背中をポンポンと叩きながら、胸の中で泣きじゃくる彩を目を細めながら眺めた。そして、彩は、涙が枯れるまで泣きじゃくった後、子供のように疲れて寝てしまったので、晃は彩を抱えてベッドルームへ向かった。
そのままベッドに下ろし布団をかけてあげた後、そこから離れようとしたが、寝ている彩は晃の指を掴んだまま離さない。
晃は苦笑いしながら、ベッドに腰をかけて少し汗ばんでいた前髪を掻き上げてあげ、寝ている彩を見つめた。
「なぁ、俺も好きだと言ったら、お前はどう思うだろうな……」
いつもの強気の晃が影を潜め、聞こえそうで聞こえない弱々しい声で彩に向かって呟く。
そして、寝ている彩の額に軽めのキスを落とし、握られていた指を解きベッドルームから静かに晃は出て行った……。
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